私はこうして退職した
こんにちわ。
西日本支部(学会)の佐藤です。
私は転職サポート担当のため、会員の方から退職のご相談をよく受けます。
「病院を辞めたい…」
「でも引き止めにあっている…」
「辞めさせてくれない…」
看護師にはよくある話ですよね。
しかし辞められない病院はありません。今回は引き止めの対処法をご紹介いたします。
実際の事例も交えて見ていきましょう。
法的には?
法律上は、「辞めたい」と伝えた2週間後には退職できます。
これは民法に明記されています。
具体的にはこんな条文です。
民法第627条「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れ日から2週間を経過することによって終了する」
要約すると「正社員やアルバイトなら自分の意志で退職できますよ」「意思を伝えた2週間後には辞められますよ」という意味です。
「病院側に退職の拒否権はない」という意味でもあります。
「辞めたいと伝えたのに、引き留めている」
これで悩んでいる方の大半は、法的には今すぐにでも退職できるのです(2週間経っていれば)
そこで法律を盾に「退職を強行した事例」を1つご紹介します。
Y.Sさんの退職事例(26歳・女性)
私は2週間で病院を退職したことがあります。
それは新卒で3年勤めていた病院です。
ただし師長との関係は最悪レベルでした。
それでも耐えに耐えていました。
でも朝礼の時に「あなたは看護師としてはまあまあだけど、人としては最低です」と師長から言われてプッツン切れてしまい「もう限界です!辞めます!」とみんなの前で宣言してしまいました。
気持ち的にも「もう辞めよう」「今すぐ辞めよう」となっていました。
ただ師長からは「退職はまあいいけど、3ヵ月後じゃないと認められない」と言われました。
でも師長の顔をこれ以上見たくはないし、師長の言いなりになるのも嫌だということで、「いえ。私は2週間後に辞めます」と伝えました。師長は「絶対に認めない」の一点張りでしたが、私も「2週間後に辞めます」の一点張りで対抗し、結果として強硬退職しました。
退職日までの2週間は肩身が狭いし、師長からの罵倒はすごいしで、精神的に最悪なほど疲弊しました。
でも周りの同僚からは「よく耐えてたよね」「次頑張ってね」と応援してもらえたため、乗り切ることができました。
引継ぎは師長に相談しても無視されてどうにもならず、書類にして提出しました。最終日は同僚達とコッソリ挨拶をして終了。人事部の方には話を通してあったため離職票や年金手帳などをもらい無事退職。病院を出た時に「やっと終わった」「もう来なくていいんだ」という解放感がすごかったです。
今回の退職は、円満退職とは程遠くなってしまいました。
反省点は多いです。特に同僚に迷惑をかけてしまったのが一番悔やまれます。
ですが後悔はしていません。
とにかく辞めれてよかった。
退職を認めてくれない時は?
「退職強行はちょっと…」
できるなら円満退職で辞めたいですよね。
もう少しマイルドな方法としては、労働基準監督署に相談し、警告してもらう方法です。
病院は労働基準監督署に目を付けられると、それなりの厄介事になるため、折れるしかなく、ほぼ確実に退職できます。
「でも…、そこまで大事にはしたくない…」
そういった時は少し強気に出ましょう。病院を辞めれないとき
「私さえ頑張れば・・・」
「私さえ耐えれば・・・」
と考えてしまう看護師は結構います。
こうした自己犠牲は、看護師の職業病かもしれません。
しかしその気持ちを利用されているのも事実です。
退職は強い意志で伝えましょう。
「1ヵ月後に退職します」と伝えてみてください。
引き止めが難しいと分かれば、折れてくれる可能性も高くなります。
それでも辞められない?
「強く言ったけど認めてくれない・・」
今は看護師不足が深刻なため、どこの病院も必死です。
ここからはケースごとに対処法を見ていきましょう。
退職届を受け取ってもらえないケース
退職届は必ずしも必要ではありません。
法律上は「退職の意思を伝える」とされており、口頭でもメールでもLINEでも大丈夫なのです。
どんな手段でも「〇月〇日に退職します」と上司に伝えればいいのです。
ただそれでは「言った言わない」の問題になるケースもあります。
この問題を回避するには、内容証明郵便で退職届を郵送するのも有効です。
そこまでしたくない方は、看護部長や人事部、総務部、同僚などにも話を通して、証人を増やしておきましょう。
もう少し待ってくれと言われるケース
「あと3ヵ月待って」
「後任者が見つかるまで」
「3月末まで」
このように退職日を先延ばしにされることも多いですよね。
1ヵ月程度であれば、妥協して待つのもありだと思います。
早すぎる退職は周りへの負担にもなりますので。
しかし3ヵ月、半年、1年という長期の引き止めは、さすがに考えものです。
もちろん余裕をもった引き継ぎ期間や、シフトの穴埋めを考慮したりなど、社会人としてのマナーは必要です。
ですが3ヵ月以上の先延ばしは、マナーの問題ではなく、病院側の問題です。
看護師が長続きしない、入ってこない、代わりが見つからない、というのは経営の問題です。
そのツケを「引き止め」という形で、看護師個人に押し付けるのは、ただの責任転換でしかありません。
「ルール通り、〇月〇日に退職します」「それ以降は出勤できません」「次はもう決まっています」と胸を張って伝えましょう。
U.Kさんの事例(39歳・女性)
私は引き止めで酷い思いをしました。
地元の総合病院で、新卒の頃からずっと働いており、結婚して子供を産んでからも復職して続けていました。
手術室、外科の一般病棟、脳神経外科で合計12年ほど働いていました。
しかし独身時代は良かったのですが、復職してからが大変でした。
夜勤のたびに、子供に寂しい思いをさせていたのが一番辛いことでした。
また部署内で大変な役割を任せられたり、リーダー業務まで任されたり、このままいくとどんどん仕事一辺倒になっていきそうでした。
研修や勉強会も多く、仕事以外でも出ていかなければならないこともたくさんありました。
家庭の方がおろそかになっていると感じていました。
師長と部長には何度も改善を求めました。
でも良くなる気配もなく、だんだん嫌気がさしてきて、退職を決意しました。
しかしここからが大変でした。
結構な引きとめにあいました。
ちょうど看護師が何人も退職した時期で、シフトが全然回っていなかったからです。
家庭の状況や育児を退職理由にしても「何とかあと1年。何とかもう少し」と引き伸ばされました。
たぶん私が辞めると他の看護師が辛い思いをします。
だから私は1年耐え続けました。
そして1年経った頃、もう一度退職したいと師長に伝えました。
でも答えはまた「何とかあと1年。何とかもう少し」と引き伸ばそうとするのです。
これには流石に呆れてしまいましたが「やっぱりか」という気持ちもありました。
ちょうどその頃、佐藤さんに相談しました。
頂いたアドバイスの中から、一番効果がありそうな方法を選んで実行しました。
具体的には「これ以上は待てません。5月末には退職させていただきます」と伝え、少し強引に退職する方法です。
しかしそれが功を奏したのか、師長から「残念だけど了解しました。今までごめんね。本当に助かったよ」と、お返事を頂けてウルっとしてしまいました。
今は回復期の病棟で働いています。
100床ほどの小さな病院ですが、働きやすさは格段に上がったと思います。
今の主任は、私の家庭環境のことも理解してくれて、シフトや子供の迎えの時間も考慮してくれています。
仕事をしながらも、家庭をおろそかにすることもなくなったのが一番よかったと思っています。
施設での仕事は医療行為はほとんどないため、かつてのような緊張感もなく、患者さんやスタッフの方々と楽しく過ごせています。
同じ看護でも場所によってこんなに違うんだという感じです。
新しい職場は気分も心機一転、頑張れます。
職場選びを間違えなければ、平穏な日常が送れると思います。
脅されるケース
「懲戒解雇にするぞ!」
「違約金を払え!」
「この辺りで働けると思うなよ!」
病院によっては脅されるケースもあるでしょう。
ですがこれらはすべて違法行為です。
まず懲戒解雇について。
懲戒解雇は、反社会的な違反をしない限り適用されません。無断欠席や遅刻の常習、犯罪などです。
普通に働いていれば懲戒解雇はまずありえません。
すぐに労働基準監督署に相談して対応してもらいましょう。
次に違約金。
違約金は払う必要が全くありません。
民法上は「労働契約の不履行について違約金を定めてはならない」と書かれています。
つまり「退職するなら違約金」は完全に違法行為です。
無視してもいいですし、労働基準監督署に相談して対応してもらうのもありでしょう。
最後に「この辺りで働けると思うなよ!」について。
近隣の病院に噂をばらまいて、働けないようにしてやるというのです。
しかしこれは脅迫罪であり、刑事事件となる重罪です。
警察の生活安全課に相談してみましょう。
H.Dさんのケース(33歳・女性)
入職してからずっと退職を考えていました。
毎日の激務、サービス残業、インシデントの頻発。
夏に体調を崩したのをきっかけに退職を申し出ました。
師長からは「あなたが必要」と熱心に引き止めをされました。
それでも私は「続けていく自信がない。10月までには退職したい」と退職の意思を曲げずにいました。
そのうちに師長からは「ここを辞めたら県内で働けないようにするから」と脅されるようになりました。
正直とても怖く、一時期は退職を諦めもしました。
「でも一生ここで働くのは無理」という思いも強く、転職エージェントに相談をしたところ、
「よくある話なので大丈夫ですよ」「師長さんが他の病院の内定を変えるような力をお持ちとは到底思えない」と言われホッとしたのを覚えています。
実際に転職を強行しましたが、3つの面接を受け、全て内定を頂けました。
退職届はエージェントさんの助言通り、師長ではなく、部長に手渡しました。それからは退職がスムーズに進みました。
皆からお別れの言葉も貰えて(師長以外)、個人的には円満退職できたと思っています。
「看護の仕事は辛すぎる…」
「もう辞めたい…」
という時は、職場選びを間違えただけだと思います。
今のわたしの職場は、人間関係がよく、有休もしっかり取れるし、毎日ほぼ定時帰宅できるし、お給料まで上がって満足しています。
まとめ
退職は法律上、2週間後には退職できます。
上司の了承は必要なく、職業の選択は個人の自由です。
しかし現実は、なかなか辞められませんよね。
そうした場合は「少し強気」が、引き止めを振り切るコツです。
しかしそれでも辞められないケースもあるでしょう。
「どうしても辞めさせてもらえない」
「あと半年待てと言われた」
「強気に出るのが怖い」
そうしたときは「誰かに相談する」と良い解決策が見つかりやすいです。
私自身、転職するときは誰かに相談するよう心掛けています。
例えば2年前に転職した時は、ちょっと相談だけのつもりで転職サイトのお世話になったのですが、そこのアドバイザーさんが予想外に優秀な方で、希望を伝えただけで、好条件の求人をいくつも紹介してくれ、おんぶに抱っこで、あれよあれよと内定が出た感じです。
アドバイザーさんは、過去に数百人も転職サポートしているプロの方ばかり。
退職ノウハウも豊富でした。
退職できない方は、一度相談してみては。
問題の大半は、相談がきっかけとなり解決するものです。
最後になりましたが。
あなたが無事に退職できるよう祈っております(-人-)
※追記(ご質問の回答)「どこの転職サイトを利用したのですか?」とメールを頂きました。
失礼しました。
↓こちらです。
私が利用した転職サイト(「看護roo!」)